みなさんこんにちは。
ロンドン駐在員のかえる2号です。
・GPの登録方法(申請書のサンプル付き)
・イギリスの日系クリニック
・近所の救急科の探し方
この記事の目次
NHSとは
NHS(National Health Service)は、イギリスの国民保険サービスです。
1948年から始まったNHSは、次のようなポリシーを掲げています。
(NHS憲章より)
「利用者の支払い能力ではなく、臨床的必要性に基づいた医療」
これに示される通り、NHS医療は自己負担なしに無料で受ける事ができます。
(処方薬、歯科、眼科検診は除く)
NHSの医療を受ける際には、どんな症状でもまずGP(General Practitioner)と呼ばれる総合診療医の診断を受ける必要があります。
そのため、NHSの医療サービスを受けるには、まずGPに登録する必要があります。
GP登録をすることで、NHS番号が各個人に発行されます。
私たちのような外国人であっても、半年以上滞在するビザを持っていれば、NHSの医療サービスを無料で受ける事ができます。
NHSとプライベートクリニック
プライベートクリニックはもちろん有料ですが、
私も含め駐在員家族は日系のプライベートクリニックにかかる事が多いです。
会社が医療補助を提供するケースが多いため、日本語で受診可能な日系クリニックがよく利用されます。
NHSとプライベート医療のメリット・デメリットを次にまとめました。
・原則無料で医療サービスを受けられる。
・救急医療の提供は基本的にNHSだけ。
・小児定期予防接種が無償で受けられる。
【デメリット】
・常に混雑しており、待ち時間や予約時間が長くなる。
【メリット】
・NHSよりも短時間で医療サービスを受けられる。
・自分で医療機関や専門医を選ぶ事ができる。
・日系であれば
【デメリット】
・医療費が高額になる。
・原則的に救急医療の対応は行っていない。
NHSの一番の魅力は何といっても無料な点です。
しかし、会社補助がある駐在員にとっては、わざわざNHSを利用するメリットはないと言ってよいです。
それでもNHS(GP)には登録しておくべきです。
特に小さなお子さんのいる家庭は、絶対登録しておいたほうが良いです!
なぜなら、救急医療は通常NHSでしか受ける事ができないからです。
急激に体調を崩したり、大怪我をしてしまった場合など、救急医療を利用せざるを得ない状況に陥る可能性があります。
実際私は、救急科にお世話になった時にNHS番号がなくて後悔しました。
渡航後いの一番にやる必要性はありませんが、後回しにしないことが重要です。
NHS利用料金は実は無料ではない?
先ほどNHSは原則無料とお話しました。
ただ、厳密にいうと無料という表現は少し語弊があるかもしれません。
というのも、政府はNHS予算不足の改善策として、2015年にイミグレーション・ヘルス・サーチャージ(IHS)という制度を導入しました。
この制度によれば、欧州経済領域(EEA)外の国民が英国の滞在許可証を取得(延長)する際に、あらかじめNHS利用料を支払う仕組みとなっています。
具体的な費用についてはコチラから確認できます。
要するに「前払い」している事になりますので、完全無料というと少し違いますね。
ちなみに、イギリスの2021年度のNHS予算は約1810億ポンド(内220億ポンドはコロナ対応)です。
国家予算に対して大体20%程度と非常に大きな割合を占めています。
GPとは
海外赴任者がNHSの医療サービスを受けるためには、まずGP(General Practitioner)への登録が必要になります。
GPに登録する事によって、NHS番号が発行されます。
GPはよく「かかりつけ医」などと訳されますが、(歯の治療と緊急医療以外)どんな症状の場合でもまずGPで診察を受ける必要がある事から、NHS医療の窓口と言ってよいでしょう。
もし専門医の治療が必要だと判断された場合は、GPが専門医のいる病院を紹介してくれます。
GPの探し方&登録方法
GP登録のステップ
GPへ登録するためのステップは次の通りです。
順番に確認していきましょう。
(2) GPの登録申込をする(窓口訪問 or Web)。
(3) NHS番号を受取る。
(1) GPを探す
GPは基本的に居住エリアの近所にあるGPに登録します。
2015年から、制度上はどこのエリアのGPでも登録可能となったようです。
ただ一般的には体調が悪くなった際に利用するものですから、ご自宅の近くのGPで登録することをおすすめします。
また、近所の住民以外の対応は強制ではないため、GPによっては利用できない事もあります。
近所のGPを探すには、NHSの公式サイトのFind a GPにアクセスしましょう。
郵便番号を入れる事で、近所のGPの一覧が表示されます。
①Find a GP に郵便番号を入れて検索
② 近所のGP一覧が表示されます。
どうやってGPを選べばいいのか迷うと思いますが、
レビュー評価が良い所や立地面を考慮して選べばよいでしょう。
私がGPを探した時はもっといろいろな情報が表示されていたのですが、今は表示結果が変わってしまった(?)ようです。
一番手っ取り早いのは、ご近所の人に聞くことかもしれません。
通常日系のクリニックを利用する方で、GPはあくまで例外的に使うような場合は、人から聞いてそのまま登録するのが楽だと思います。
(2) GPの登録申込をする
GPの登録申請には、「直接窓口訪問する方法」と「Web申請の方法」があります。
私は直接訪問したのでWeb申請の方法は経験しておりません。
Webの場合は各GPのWebサイトにアクセスし、新規登録者の手順に従って進めてください。
直接窓口に行く場合は、必要書類を持参してGPに行き、GP登録を行いたい旨を伝えましょう。
・登録申請書(GMS1)
Webサイトからダウンロード可能です。
記入方法サンプルは後述します。
・身分証明書
BRPカード、運転免許証、パスポートなど
・住所証明
光熱費の請求書、Bank statement、Tenancy Agreementなど
※GPによっては、GPが管理する申請書に別途記入を求められることもあるようです。
(3) NHS番号を受取る
NHS番号は郵送でご自宅まで発送されます。
登録後 1~2週間くらいで届くと思います。
これでGP登録は完了です!
(参考)NHS公式サイトより
GP登録申請書(GMS1)のサンプル
記入サンプルは次の通りです。
①Patient’s detail
・氏名、誕生日、住所、電話番号、出生地などを記載します。
※ちなみに女性の場合、既婚者はMrs、未婚者はMiss。
Msはどちらの場合でも使用可能です。
②Previous medical record
過去のNHS登録情報についての記載欄です。
初めて登録する方は記載不要です。
③If you are from abroad
外国から来た人が登録する際の記入欄です。
・初めてGP登録する方は、”Same as above”と記載します。
・移住目的で入国した日を記載します。
④Armed Forces GP
イギリス軍に所属した事がある人の欄です。
日本人は関係ありませんので、記載不要です。
⑤ Dispense medicines and appliances
通常記入は不要ですが、どうしてもGPで薬を処方して欲しい場合にチェックが必要です。
イギリスでは処方箋の受取は別途薬局で行いますが、なんらかの事情でそれが難しい場合を意図していると思われます。
・自宅とGPの距離が1.6km以上離れていて、健康上の事由などで薬局に取りに行くのが難しい場合は、2項目にチェックします。
⑥Signature of Patient
・自筆でサインして、記入日を記載します。
⑦ NHS Organ Donor registration
死亡した際の臓器提供の意思があれば、こちらに記入できます。
希望する臓器の欄にチェックを入れ、サイン・署名日を記載します。
・”Any of my organs and tissue” はすべての臓器提供意思がある場合。
・その他は次の通りです。
(Kidneys) 腎臓 (Heart) 心臓 (Live) 肝臓
(Corneas) 角膜 (Lungs) 肺 (Pancreas) 膵臓
⑧ NHS Blood Donor registration
献血意思のある方は、サイン・署名日を記入しましょう。
過去3年以内に献血した事がある場合はチェックボックスにチェックします。
2ページ目
2ページ目は病院側の記入項目なので、記載不要です。
日系のプライベートクリニック
駐在員など日本人がよく利用する事の多いクリニックです。
ロンドン医療センター
ロンドン医療センターは、30年以上に渡って在英邦人を支えてきた日系クリニックです。
診療時間外でもボイスバンクサービスという、24時間365日対応可能な電話窓口を設けています。
【最寄駅】Hendon Central駅(Northern line)
【駐車場】あり
ジャパングリーンメディカル
ジャパングリーンメディカルは対話診療を重視している日系クリニックです。
ロンドン市内のシティクリニックと、日本人が多く住む西ロンドンのアクトンクリニックの2店舗を構えます。
アクトンクリニックには、レディースクリニックも併設しています。
【住所】10 Throgmorton Avenue, London, EC2N 2DL
【最寄駅】Liverpool Street駅
【駐車場】なし(有料駐車場のみ)
【最寄駅】Ealing Common駅
【駐車場】あり
日本クラブクリニック
日本クラブは1965年以来、実に50年以上に渡ってロンドンで医療を提供してきた診療所ですが、残念ながら2021年3月末で閉鎖となりました。
その他日系のクリニック・歯科
日系のクリニックや歯科は、在英日本大使館のホームページでも紹介されています。
お住まいの地域に近いクリニックはチェックしておきましょう。
救急医療の連絡先
もしもイギリスで救急事態が発生した際には、2通りの手段があります。
(1)”999″に電話して救急車を呼ぶ。
(2)NHS病院の救急科(Accident and Emergency, A&E)に赴く。
私は夜遅くにNHSの救急科に子供を連れて行った事があります。
その時は出血が止まらない子供を目の前に、ただただ焦ってしまって、救急科を見つけるのに手間取ってしまいました。
実際に救急対応が必要な事態に遭遇すると、焦ってしまいなかなかすぐに救急科のある病院を探すことは難しいです。
近所の救急外来のある病院はあらかじめ把握しておくことをおすすめします。
救急車を呼ぶ
イギリスの救急車の番号は”999”です。
ただし、999は救急車だけでなく、消防・警察への緊急連絡先も兼ねています。
電話がつながると、まず何の要請なのかを聞かれます。
【救急】Ambulance
【警察】Police
【消防】Fire brigade
救急車の場合はAmbulance(アンビュランス)と伝えてください。
救急車では、救命救急士の判断に従い病院に運ばれますので、病院を指定する事はできません。
また、日本に比べて救急病院の数が少なく、命に関わる症状でない場合には優先されないために待ち時間が長いです。
ヨーロッパの共有緊急番号も使える
イギリスでは「999」の代わりに「112」も使う事ができます。
「112」は1991年にヨーロッパでの共通の緊急番号(救急・警察・消防)として制定されたもので、EU各国で利用可能です。
救急科(Accident and Emergency)に行く
もう一つの方法は、NHSの救急科に行くことです。
救急科はAccident and Emergency(A&E)と呼ばれています。
イングランドであれば、こちらのNHSのページから救急科検索が可能です。
① 郵便番号を入力して”Search”
② 近所の救急外来が表示されます。
今現在Openしているかどうかも確認できますので、もしもの時もすぐにチェックできます。
自宅からの距離や、24H受付可能かどうかなども確認できます。
あらかじめ緊急時に利用する救急外来を決めておくと万が一の時にスムーズでしょう。
イングランド以外の地域の場合
イングランド以外の場合は次のWebページから救急科の検索ができます。
【ウェールズ】→こちらから検索。
【北アイルランド】→こちらから確認。
”Your local Emergency Department”から、近隣病院を選択ください
【体験談】イギリス救急医療を利用する
その時の体験をこちらに書いておこうと思います。
私はこの経験があったので、
・GPには必ず登録しておくこと。
・あらかじめ救急科は調べておくこと。
を強くおすすめします。
救急科が見つからない
私は普段は日系クリニックの病院を利用しています。
そのため、当時はGPの登録手続きもしていない状態でした。
いつかやろうとは思っていたものの、結局ずるずると登録をせずにいたのです。
ですが・・ある日に子供が出血を伴う大怪我をしました。
丁度帰宅途中だった私が妻から連絡を受け、急いで帰宅した時には目を覆いたくなるような光景でした。
床は血まみれ、子供は大泣き、妻も出血を少しでも止められるように必死で傷を抑えている様な状況でした。
時間は既に夜。
普段通っている日系クリニックは既に閉まっていますし、仮に空いていても救急医療は提供していません(プライベートクリニックの多くは、時間外診療や救急治療を行っていません)。
私は混乱しながら緊急医療を、スマホで探しました。
ですが、全然スムーズに見つかりません。
日本語のサイトはほとんどないし、英語も頭に入ってきません。
正直冷静さを欠いていて、救急科を見つけるのにとても時間がかかりました。
ですがなんとか最終的に「West Middlesex University Hospital」という病院を見つけました。
もう一人の子供は知人に預かってもらう事ができたので、車で急いで病院へ向かいました。
イギリス救急医療の実態
病院に向かう中、まだ子供はぎゃんぎゃん泣いています。
慣れない道で、焦って道を間違えたりもしましたが、ようやく病院に辿りつきました。
駐車場に車を停め、次に困ったのは、病棟が何棟もあって救急科がどこか全然わかりませんでした。
焦りましたが、とにかく近くの病棟にまず入り、見付けたスタッフ(おそらく仕事終わりの看護師でした)に声をかけました。
すると親切にも、裏道みたいな所を通して救急科の窓口まで連れて行ってくれました。
これは本当に助かりました・・
・・・・ですが、
いざ救急科についてびっくりしました。
溢れる人・人・人です。
もちろん座る場所なんてなくて、みんな壁に持たれたり地べたに座ったりして自分の番が来るのを待っている様子でした。
正直「え、これが救急?」と思いました。
日本で何回か利用した事のある救急外来は、人はそんなにいません。
特に夜間ならむしろまばらなこともあります。
私が行った救急は、冗談でも誇張でもなく、まるで何かイベントでも始まるかのように人がごった返していました。
NHS番号がない
私たちは促されるまま、救急科の窓口に行きました。
窓口担当は40代くらいの女性で、子供の怪我の状況や経緯など、いくつか質問に答えていました。
すると、NHS番号について聞かれました。
私はGP登録しておらず、この時点でNHS番号がありません。
正直にない事を伝えると、露骨に嫌な顔をされました。
そして「なんでNHS登録していないの?」と聞かれました。
登録しようと思っていたけど、まだできていなかったと正直に伝えます。
ですが、その後も何回か同じような事を言われました。
確かにGP登録していなかったのはこちらに非があるのですが、何度も言われていると私もイライラしてしまいました。
当時の心情的には、何回も言われてもどうしようもないし、傍らに血を流しながら泣いてる子供がそこにいて、一秒でも早く子供を見てほしいのです。
そんなどうでもいい話はいいから、とにかく早く手続きしてくれと思っていました。
結局、診察にあたっては、仮番号みたいなものを作って診察に回していた?と思われます。
詳細は分かりませんが、それでNHS番号がない事が面倒だったのかもしれません。
担当者から、ケガの状態から優先的に案内してくれると言われ、ひとまず一安心しました。
ところが・・・
待ち時間がマジで長い
まだ出血が続いている状態でしたが、もうちょっとで処置してもらえる。。
優先で通してくれると言われ、とりあえず一安心。
そう思っていたものの・・待てど暮らせど一向に呼ばれません。
他の人たちと同じように地べたに座りながら、ただただ順番を待ちます。
隣にいた病人(付き添い人?)も子供の出血の様子をみて
「あなたが一番最初に見てもらうべきよ・・」などと声をかけてもらいました。
1時間以上は確実に経った頃でしょうか、ようやく呼ばれました。
やっと呼ばれた! と思い急いで呼ばれた部屋の中に行くと・・
・・そこは診察室ではなく、また別の待ち部屋でした。
ここでもまたひたすら待ちます。
もう子供は泣き疲れ、、ぐったりとしていました。
出血は和らいでいたものの、傷自体がふさがっていないため痛くて寝れなかったのだと思います。子供は寝て、また起きて泣いてを繰り替えしていました。
今か今かと診察を待ちますが、さすがにこちらも疲れてきます。
しばらくしてようやくお呼びが掛かりました。
すると今度はお医者さんらしき人が出てきました。
「よかったやっと診てもらえる」と思い、もう一度状況などを説明します。
受付で話したのとほとんど同じ経緯をもう一度説明しました。
なにも情報が横通しされていないのかな・・・とちょっと不安になりましたが、とにかく診てもらえて安心していました。
ようやく処置を受ける
その後、今度は処置を待つ時間があったのですが、
これはそこまで待たず、しばらくして処置室に通されました。
看護師?のような女性が3名ほどで、子供の傷を見て処置を検討していたように見えました。
それから、どうやって治療するのか内容説明を受け、すぐに処置がされました。
ぎゃん泣きする子供を押さえつけながら・・なんとか終わりました。
・・・ようやく寝る事ができた子供を車に乗せると、どっと疲れました。
既に深夜、とっくに24時は回っていたと思います。
受付から処置までどのくらいかかったのか正直覚えていませんが、
3~4時間くらいでしょうか。
とにかく待ち時間が長く、本当に大変でした。
ですがこれは、優先案内してもらっての3~4時間です。
あの時まだ待っていた人たちは一体どれだけ待ったら診断を受ける事ができたのでしょうか。。
待ち時間が長いというのは、前情報としては知っていましたがこれほどとは思いませんでした。
この時はGP登録していなかったために、私たちはNHS番号がありませんでした。もしも登録していたら、少しでもスムーズに治療を受ける事ができたのかもしれません。
そう思うと、やはり早めに登録しておくべきだったと後悔しています。
私のように後悔しないためにも、GP登録は必ず実施しておきましょう。
さいごに
今回はイギリス医療のあれこれを、実体験を踏まえてお話させていただきました。
何があるかわからない海外生活、もしもの時に備えて準備はしっかりしておきましょう。
※本サイトでは、海外赴任前後に必要な手続きや海外お役立ち情報ついてもまとめています。もしよろしければご覧になってください。
GP登録方法や、救急科の探し方、日系病院などを紹介していきます。
面倒で後回しになってしまいがちなGP登録ですが、確実にやっておきましょう。